保護者のためのコラム

対談|就活生の保護者を対象とした新サービス「マイナビ保護者サポート」について

対談|就活生の保護者を対象とした新サービス「マイナビ保護者サポート」について

マイナビは2025年1月、保護者がお子さまのキャリアや就職活動を応援するためのサイト「マイナビ保護者サポート」を立ち上げました。このサイトでは、キャリアや就職活動に関する学生と保護者の間の情報格差を解消し、就職活動の現状や保護者としてできる支援のノウハウ、お子さまと向き合う際の心構えなどを発信していきます。 そこで、新サービスの立ち上げに携わったマイナビ編集長の高橋と、マイナビ副編集長の谷口に「マイナビ保護者サポート」が生まれた背景や今後の展開について語ってもらいました。

Profile

高橋 誠人
マイナビ編集長
2002年に入社後、キャリアサポーターとして10年間、学生向けの広報業務に従事。関西圏の大学・短大・専門学校で就活支援講座を開催し、学生の就職活動をサポートする。その後は企業の採用コンサルティングに携わり、熊本支社長や鹿児島支社長、兵庫支社長を歴任。2018年7月より現職。日本キャリア開発協会会員(CDA)。二児の父。

谷口 有
マイナビ副編集長
2008年に入社後、学生や学校担当者向けのキャリア支援・就職支援業務に従事。社内のスキルアップ研修の企画・実施も担当。新卒採用や中途採用では、インターンシップ・説明会・面接・研修などに携わる。2019年4月より現職。日本キャリア開発協会会員(CDA)。一児の母。

就職活動中の子どもがいる保護者に、適切なサポートを

高橋:私は、大学やキャリアセンターから就職活動に関する講演やセミナーに招かれる機会がたくさんあります。そんな中、近年は「保護者向けのセミナーを開催してほしい」というニーズが増えてきました。実際、参加される保護者の方々は真剣にメモを取るなど、就職活動に関する情報収集に非常に熱心です。同時に、「子どもの就職活動の様子が気になるものの、何をしてあげればいいかわからない」という声をたくさん聞いてきました。こうした状況を受けて、就職活動中のお子さまがいる保護者に向けたサポートが必要ではないか、と考えるようになったのです。

谷口:2023年に創業50周年を迎えた当社では、イノベーション促進のためのアイデアコンテストを開催しました。その中で、高橋さんのチームが提案したのが、就職活動中のお子さまがいる保護者をサポートするサービスでしたね。

高橋:はい。就職は人生の大きなターニングポイントです。そのため、保護者の方々はお子さまの就職活動の状況が非常に気になることでしょう。ただ、保護者対象の情報はまだ十分に整備されているとは言えないのが現状。就職活動サイトを運営する私たちが主体となって取り組むべきだと考え、この企画を立ち上げました。

谷口:そして、高橋さんのチームの企画が採用されることが決定。2024年、保護者に向けた情報発信を行うための組織編成を経て、当サイトのリリース決定に至った…という経緯です。サービスの内容を構築していく過程で市場調査を行ったのですが、近しいサービスやサイトがほとんど見当たらず…。「保護者のためのサイトを作ることは意義がある!」と改めて感じました。

高橋:保護者としては、お子さまに「自立してほしい」と願う一方で、「失敗しないよう就職活動をサポートしたい」という気持ちもあり、ジレンマがあると思います。また、保護者自身が就職活動をしていた頃と比べ、先行き不透明感がかなり強まったことも興味関心が高くなった要因だと感じます。

谷口:ただ、保護者が「どこまで就職活動に関わったらいいのかわからない」「子どもの役に立ちたいけど、何をすればいいのかわからない」と悩んだときに、頼れるものがない…。そんな状況にこそ、「マイナビ保護者サポート」をご活用いただけるのではと感じています。

かつてと今では、就職活動を取り巻く環境がまったく違う

谷口:サービスをスタートさせるにあたって、当社で「マイナビ保護者サポート 就職活動中の大学生・社会人1年目の子がいる保護者調査」を実施しました。お子さまへの関わり方としては、「子どもの気持ちには基本同意する」が53.0%でもっとも多く、次に「子どもが相談してきたらしっかり話を聞く」が48.2%、「将来のことは本人に考えさせる」が45.9%と続きます。この結果から、就職活動をお子さまの主体性に任せている保護者が多いことがわかります。

高橋:多くの保護者は、お子さまの気持ちを尊重しています。ただ、「マイナビ 2022年卒大学生 活動実態調査(9月)」によると、保護者から内々定先について否定的な意見や反対を受けて、最終的に内々定先を辞退した学生が30.0%にのぼるという結果も。保護者からの意見に従う学生も一定数いることが浮き彫りになりました。

谷口:先ほどの保護者調査でも、「顔を合わせるたびに『今どの段階なの?』と何度も聞いてしまった」「難易度の高い会社を目指すように勧めて、結果的に心理的なプレッシャーを与えてしまった」など、つい過干渉になってしまうという保護者が少なくありませんでした。

高橋:保護者として、お子さまの就職活動の状況が気になるのは当然です。だからこそ、ついあれこれ口を出したくなりますが、保護者が学生だった時代と今では、就職活動を取り巻く環境がまったく異なります保護者世代が50歳前後だとすると、その頃は入社すれば定年まで勤める終身雇用が主流でした。また、企業とのコンタクトは就職情報誌のハガキで資料請求をするか、大学の就職課に届いた求人票を参考にするのが一般的という時代。社会情勢や学生の価値観、就職活動の進め方は、今とは大きく違います。

谷口:約30年の隔たりは、とても大きいですよね。特に今は、インターネットやスマートフォンを使って就職活動をするのが当たり前です。説明会や面接にも、オンラインで参加できる時代になりました。

子どもにとって、就職活動で頼りになる存在は保護者

谷口:保護者が就職活動をしていた頃と比べて、就職活動を取り巻く環境が大きく変化しているとはいえ、多くの学生にとって保護者は今でも頼りになる存在のようです。「マイナビ 2025年卒内定者意識調査」では、学生の58.7%が意思決定の際に父親や母親に意見を聞いたと回答しています。

高橋:ただ、保護者は安定志向が強く、公務員や大手企業を勧める傾向があることも事実です。「2023年度 就職活動に対する保護者の意識調査」によれば、保護者がお子さまに就いてほしい職業の1位は「公務員」。2位以下には有名企業が名を連ねています。しかし、変化の激しい今の時代、5年後や10年後に世の中がどうなっているかはわかりません。だからこそ、保護者の価値観を押しつけるのは危険です。

谷口:これまで当社が登壇した保護者向けセミナーでは、業界や企業についての質問をいただくことが多いですよね。

高橋:「今後伸びそうな業界は?」という質問を受けることが多いですね。けれども私は、「わかりません」と答えています。短期的にはAI関連で半導体業界、インバウンド需要による観光業界が伸びる可能性があるなどとは言えますが、先行きが不透明な時代に突入しており、私がなにかしらの回答をしてしまうことで、お子さまもにその業界を目指すよう促す可能性があるためです。そうではなく、保護者にはお子さまがどのような時代、社会になっても主体性を持って時代を切り拓くようなチカラをつけるべきでは?と伝えています。

ティーチングではなく、コーチングのスタンスが大事

谷口:今の就職活動事情を知らなくても、保護者にできることはたくさんあると思います。実際、「2023年度 就職活動に対する保護者の意識調査」では、保護者が行った支援として上位に「あまり気を遣わないような雰囲気や環境作り」「励ましなど精神的サポート」「(靴磨き、アイロン掛け等)身だしなみを整える手伝い」がランクインしました。そのほか、お子さまが悩んでいる場合には、エントリーシートの添削や自己分析のアドバイスもありがたいでしょう。

高橋:自己分析を深めるためには、第三者の客観的な視点が重要です。そんな中、小さい頃からお子さまを見てきた保護者の意見は大きなヒントになるはず。その際、短所を指摘するのではなく、長所を伝えることが大切です。

谷口:単に長所を挙げるだけでなく、「前はできなかった○○ができるようになったよね」といった成長の過程を合わせて伝えると、より嬉しく感じてもらえるかもしれませんね。

高橋:保護者は、お子さまにとって一番身近な人生の先輩です。自身の就職活動や仕事について、経験談を伝えてあげるのもいいでしょう。特に、なぜ今の仕事を選んだのかを教えてあげると、会社選びの軸を見つけるヒントになるかもしれません。

谷口:保護者の価値観とお子さまの価値観が似ている場合、特に参考になりそうですね

高橋:保護者はつい、お子さまに「○○しなさい」と言いたくなります。しかし、就職活動をサポートする際に大切なのは、ティーチング(教えること)ではなく、コーチング(問いかけて答えを見出してもらうこと)。口を出したくなる気持ちはわかりますが、最終的には本人に答えを考えさせることが重要です。お子さまの自転車の練習と同じで、最初は寄り添って支える。そして、少しずつ自走できるようになったら、そっと手を離してあげればいいのです。 

谷口:そうですね。お子さまは自立した一人の人間です。保護者として一段上の立場から教える姿勢ではなく、目線を揃えて伴走する姿勢が求められると思います。

親子で子どものキャリアを考えるときに役立つサイトへ

高橋:保護者世代と子世代の就職活動に大きなギャップがあるように、時代に合わせて就職活動を取り巻く環境は大きく変化します。今後は生成AIの進化にともない、人々の職業観も大きく変わっていくでしょう。そのような中、「マイナビ保護者サポート」では常に就職活動に関する最新の情報を、保護者の方々に届けていきたいと考えています。

谷口:これまでの話にも出てきた「過干渉するのではなく、一歩下がった伴走者になる」「ティーチングよりもコーチングが大事」といった、お子さまのサポートに役立つ情報も紹介していきたいです。また、「マイナビ保護者サポート 就職活動中の大学生・社会人1年目の子がいる保護者調査」の中で、「就職活動の話を、どう子どもに切り出したらいいかわからない」という回答がたくさんありました。ゆくゆくは、親子で一緒に自己分析ができるワークシートなども提供していきたいと考えています。そのようなツールがあれば、「一緒にやってみない?」とお子さまに声をかけ、就職活動について話し合うきっかけにもなるでしょう。

高橋:今は、多くの大学が保護者向けに就職ガイダンスを実施している時代です。「オヤオリ」や「オヤカク」という言葉があるように、保護者対象の説明会を開催したり、保護者に内定状況を確認したりする企業も増えています。私たちは、保護者の方々がお子さまの就職活動を支援する際の疑問や不安を解消し、親子間のコミュニケーションが活発になり、最終的にはお子さまが自分でキャリアを選択できるような環境を作りたいと思っています。

谷口:年齢を重ねるにつれて、多くの家庭では保護者と子の関わりが自然と減っていくものです。保護者がお子さま世代の就職活動を理解したうえで、お子さまの納得のいくキャリアを見守り応援する…そのようなご家庭が増えることを願っています。

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