「おやごころ」は、子育て経験のある保護者の方々にリアルな体験談を語っていただくインタビュー企画です。今回は社会人として活躍する2人のお子さまを育てたお父さまにインタビュー。大学進学や就職といった人生の大きなターニングポイントに、親としてどう関わり、どのような思いで見守ってきたのかを伺いました。前編では、主に大学進学に際して、保護者としてどのような対応をしてきたのかについてご紹介します。
高校卒業後の進路は、子どもたちが主体的に決めた
―お子さまとは、高校卒業後の進路について、話し合ったのはいつ頃ですか?
特に話し合ったことはありません。ただ、息子は中学生のときにすでに進学したい大学と学部(理系)を決めていたようです。私は、妻からの報告でそのことを知りました。高校受験に向けて、妻が息子を連れて近所の塾の面談に行った際、塾長が志望校を聞くと、いきなりそのように答えたらしく…。妻も塾長も、息子が大学名を口にしたことに驚いたようです。
―高校名が出てくると思ったら、いきなり大学名。しかも、学部まで明確に決まっているなんて驚きますよね。
そうなんです。妻も初めて知ったらしく、「びっくりした」と言っていました。ただ、その話を妻から聞いたときは私も驚きましたが、「ああ、やっぱり息子らしいな」と感じたことを今でもはっきりと覚えています。
正直、親としては「まだ高校受験前なのに、ずいぶん早くから考えているな」と思いましたが、本人はいたって自然に答えていたようでした。
娘は、早くから看護師になることに決めていたようです。学生時代は運動部に所属しており、貧血で倒れて病院でお世話になったことがあり、その経験から看護師という仕事を意識するようになったのかもしれません。
親族に看護師として働いていた方がいたので、その影響も少なからずあったのでしょう。親としては正直、「大変そうな道を選んだな」と思いましたが、本人がやりたいことを応援するのが一番だと考えていました。

口出しは控え、見守る姿勢を重視
―お二人とも、早い段階から自分の意思でしっかりと目標を定めていたのですね。
はい。ただ、実は二人とも高校時代、最初は文系でした。息子は特に、文系のままであれば偏差値が高い大学を目指せるほど、学力が高かったようです。けれども、3年生になってから中学時代に憧れていた学部(理系)のことを思い出し、思いきって進路を変更したようでした。
―そんな大きなターニングポイントでも、お子さんから相談を受けたり、ご自身から積極的に助言したりすることはなかったのですか?
相談された記憶はありませんし、アドバイスをしたこともありません。ただ、息子には、もし落ちたときのことを考えて、「別の大学も受けておいたら?」とは言いました。すると、「受かっても行かないよ」と即答されました。
結局、「自分で決めたことなら好きにすればいい」と思うしかありませんでした。そして、高校3年生の秋にはキャンパス見学に行き、本人はあらためて決意を固めたようです。
娘が文系から理系に転向したのは、高校2年生の終わり頃か、3年生の初め頃だったと思います。彼女は、一度やると決めたらとことん真剣に突き詰めるタイプ。高校時代には、学園祭のミュージカル公演に向けて発声を学ぶためにスクールに通うなど、本気で取り組んでいました。
あまりの熱の入れように、受験勉強は大丈夫なのかなと心配になるくらいで…。そんな性格なので、文系への転向についても、本人が納得しているなら大丈夫だろうと思い、特に口出しはしませんでした。

息子の大学の合格発表のときは、さすがに緊張した
―お子さまの高校卒業後の進路選択について、お父さまから積極的に働きかけることはなかったのでしょうか?
まったくなかったですね。子どもたちが自分で考えて決めたことには、あまり口出しはしないようにしていました。特に、息子からは進路について相談されたことは一度もなかったです。
ただ、進路のこととは異なりますが、息子は高校の部活動で部長をしていて、部の運営で悩んだときに相談されたことがありました。私がお風呂に入っていたらいきなりやってきて、「お父さん、どう思う?」と悩みを打ち明けられたんです。進路の相談ではありませんでしたが、困っているときに自分を頼ってくれたことは、父親としてとてもうれしかったですね。
娘の進路選択の際もこちらから働きかけることは特にありませんでした。娘の進路選択で一番印象に残っているのは、推薦で高校を受ける際に、模擬面接をやってほしいと言われたことです。それらしくするために私はわざわざスーツに着替え、あえて辛口モードで対応。
「そういう聞かれ方をしたら答えられないよ…」と言われるほど、容赦ない模擬面接でしたね。具体的には、娘の答えに対して「なぜ?」「どうして?」と次々に深掘りしていくような感じです。「自分の言葉でしっかり説明できるようにしておいたほうがいいよ」とアドバイスしました。
―お子さまの進路に関して、親として緊張したシーンはありましたか?
自分で考えたことを好きなようにやればいいというスタンスで、あまり気にしていませんでしたが、大学入試の合格発表のときはさすがに緊張しましたね。特に息子のときは、朝9時頃に合格者が発表されたのですが、妻や息子からなかなか連絡が来なくて…。
仕事をしながら落ち着かない気持ちで、「ダメだったのかな」と思っていたんです。ところが息子はゲームに夢中で、合格発表をチェックするのを忘れていたとのことでした。そんな自由さも、今振り返ると「息子らしいな」と笑ってしまいます。

勉強や進路の話より、子どもと楽しく過ごすことを重視
―お子さまの教育方針について、夫婦で話し合うことはありましたか?
特にありませんでしたね。お互いにあまり干渉せず、「子どもたちに任せよう」という考えは自然と一致していました。進路についても、親が細かく口出しするのではなく、本人たちが考えて決めたことを尊重するスタンス。特別に話し合ったわけではありませんが、そうした感覚は夫婦の間で共有できていたのではないかと思います。
―親として、つい勉強や進路のことに口を出したくなる場面もあったのではないですか?
実は、それがそうでもないんですよ。というのも、私の仕事が忙しくて、子どもと過ごせる時間が限られていたんです。夜はどうしても帰宅が遅くなり、一緒に食事をとるのもままならなかったので、朝食は必ず一緒に食べるようにしていました。限られた時間だからこそ、勉強や進路の話をするのは避けて、なるべくリラックスして会話を楽しむようにしていたんです。
―子どもさんたちからしたら、きっといい親御さんだったんでしょうね。
それはどうかわかりませんが、子どもと一緒にいるときは、とにかくご機嫌を取るのに必死でした。怒ったこともほとんどないですね。子どもが小さかった頃などは、あまりにも怒らなかったので、逆に妻から「なぜ怒らないの!」と私が叱られるくらいでした。
―お子さまと接する時間が少ないぶん、どのような工夫をして家族との時間を楽しんでいたのですか?
どれだけ忙しくても、夏休みの家族旅行だけは大切にしていました。例えば、きれいな海に行こうというテーマが決まれば、わざわざダイビング雑誌を買ってきて真剣にリサーチ。宿泊先や移動手段のプランも細かく考え、子どもたちがエンジョイできる工夫をあれこれ練るのが、私にとっても楽しみのひとつでした。
さらに、旅行の間に聴く子どもたちの好きな曲をあらかじめダウンロードしてプレイリストを作ったりするなど、準備の段階から家族全員がワクワクできるよう意識。旅行全体のプランニングそのものを楽しんでいました。

後編では、お子さまの就職活動の際の見守り方、サポートの方法についてお聞きしました。
公開をおまちください。






